身近な野鳥の識別講座④ 幼鳥図鑑

澤本 将太

季節は夏に向かおうとしています。関東地方は梅雨真っただ中。天気が優れない日が多くて思うように出かけられず、悶々としている方も多いのではないでしょうか。いま、鳥の世界は繁殖期の終盤戦。家の周りや公園では、巣立った幼鳥を連れている家族の姿が見られるはずです。成鳥が幼鳥に餌を与えている光景は微笑ましいですね。また、幼鳥たちの動作が成鳥よりも遠慮がちで世間慣れしていない様子は、見ていて心配にもなります。今回はそんな幼鳥たちのなかでも、住宅街や公園でもよく見かける種類を12種(住宅街でよく見る鳥9種、水辺でよく見る3種)取り上げてみました。見慣れた鳥たちでも大人と子供の区別ができると観察がもっと面白くなると思います。 

 

◆住宅街や公園で見かける10種

  

スズメ 

幼鳥は嘴の基部が黄色い。羽毛は綺麗に並んでいて傷んでいない。顔の黒味は薄い。 

巣立ちしてしばらくはシリシリシリ・・・と聞こえる声で存在に気が付くことも多い。

 

 

ムクドリ

全体的に褐色で、嘴や脚のオレンジ色も鈍いのが幼鳥。7月頃からは繁殖を終えた家族が集まりはじめる。グラウンドや公園など開けた場所で騒がしく鳴きながら餌を探す光景が見られる。

 

ヒヨドリ

口角が淡いことや嘴がピンク色、頬の赤い模様が目立たない、頭部の羽毛が短いことなどで鳥と区別できる。尾羽が長くなって羽毛が成鳥に近づくと区別が難しくなる。

 

 

ハシブトガラス

幼鳥の虹彩は濁った灰色で、成鳥より顔つきが怖く見える。口の中は赤い。巣立ち後もしばらくは親から餌をもらうため、翼を震わせながら親に餌をねだる光景が見られる。声も張りがなく、「アー」と聞こえる。

 

 

ツバメ

成鳥よりも羽毛の青色の光沢は鈍い。嘴の基部や口角は黄色。頭部や喉の赤褐色も色が鈍く、外側の尾羽も短い。

 

 

シジュウカラ

幼鳥の体下面は黄色っぽい。嘴も黄色味があり、頭部も黒ではなく黒褐色。

 

 

ハクセキレイ

成鳥は雌雄ともに黒い羽毛があり白-黒の2色に見える。一方、幼鳥の羽毛は灰色-白。顔に黄色味があり、口角も黄色味がある。

 

 

カワラヒワ

成鳥より地味な色。胸から腹にかけて細い縦斑が並ぶ。

 

 

ツミ

近年、関東では住宅地の小さな公園で繁殖することが増えている。幼鳥はまだ尾が短く、巣立ち後は巣の近くの枝で並んでいることが多い。全体的に褐色で、蝋膜が黄緑色(成鳥は黄色)、虹彩が濁った灰色であることで区別できる。雌の成鳥とは、胸~腹の斑が細い横斑ではなく、3つ(縦・横・ハート型)の形になっていることでも区別できる。

◆水辺で見かける幼鳥たち

  

アオサギ

成鳥に見られる黒い冠羽はなく、頭部には白い幼綿羽が残ったまま巣立つ。全体的に灰色で首や頭頂部は白くない。羽毛の縁がはっきり白いのも幼鳥の特徴。また、幼鳥は木の棒などを咥えて狩りの練習をする行動をするので、行動からも区別できる。

 

 

ゴイサギ

幼鳥は全体的に褐色で、黄褐色の斑点が羽毛に並んでいることから別名‛ホシゴイ‘ という愛称がある。頭頂部に白い幼綿羽を残して巣立つ。嘴も成鳥より黄色っぽい。幼鳥の虹彩はオレンジ色で、加齢とともに赤くなる。成鳥になるのは4年目とされる。

 

 

カルガモ

小さい雛のころは大きさで容易に区別できるが、大きくなると難しくなる。成鳥と比べると、幼鳥は胸から腹にかけて細かい斑が密に並んでいる、羽毛が綺麗など違いがある。また、成鳥は天敵が近づくと首を上げて周りを見渡す。

 

 

カワセミ

幼鳥は胸の帯に灰色味があることや、足の指が赤ではないことが成鳥と異なる。巣立ってしばらくは親から給餌を受けるので、親が餌を持ってきたときに違いを見比べてみよう。

幼鳥特集、いかがでしたか。成鳥と形はそっくりでも、幼鳥は①羽毛の色が鈍い、②模様が違う、③羽毛が綺麗に整っているというような特徴があります。種によって時期は様々ですが、巣立ちしてしばらくは親にくっついて暮らしているため、巣立ち直後はこうした違いを見比べる絶好のチャンスです。観察してみてください。


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