葛西海浜公園 西なぎさにコアジサシが大集合

落合 はるな(葛西臨海公園探鳥会 担当)

新型コロナウイルス感染症の拡大により外出自粛が余儀なくされた今年の春、絶好の探鳥シーズンを逃して残念ではありましたが、野鳥の生活にとっては良いニュースがありました。葛西海浜公園(江戸川区)は、4月11日から5月25日まで閉鎖され、渚橋から先の西なぎさへの立ち入りができない状態が続きました。その間に、これまでに見られなかった数百羽ものコアジサシが、西なぎさの砂浜に飛来して営巣を始めたのです。

場所は、西なぎさの東側のエリアです。普段の探鳥会で踏みしめて歩いている砂浜に、コアジサシの白い姿が点々と座っている姿、また「キリッ」と鋭い鳴き声を上げながら青空を飛び交う様子は、夢のような圧巻の光景でした。今回の繁殖が成功すれば、折しも東日本大震災のあった2011年以来8年ぶりとなります。これまで関係者の皆さんによって、保護区の設置やデコイ(繁殖地に誘致するための模型)などが行われてきました。また当会では、コアジサシの繁殖環境を良くするための環境整備イベントを4月末に計画していました(コロナウイルス感染症対策の一環で中止)。コアジサシはそんな動向を知ってか知らずか、人のいないこの「チャンス」を逃さずに、これまで保護区の設置されていなかったエリアを子育ての場として選択したのです。野鳥の目ざとさ、したたかさを改めて感じました。

5月26日からは公園の閉鎖が解除され、保護区の外から観察ができるようになりました。観察に出かける際には、保護区から少し離れた場所で、できれば座って、マナーを守りながらコアジサシを応援してあげてください。マナーを守る人が多くいることで、むやみな立ち入りを防ぐ効果もあります。また保護区の周りでは、コアジサシが水面の魚めがけてダイブする姿をあちこちで見ることができます。これを機会にぜひじっくり観察してみてください。また、観察の際にはコロナウイルス感染予防と熱中症に充分にご配慮ください。

 

また異例とも言える今回のコアジサシの動向に応え、公園の再開前に杭とロープを運び入れ、これまでにない大規模な保護区を設置してくださいました、(公財)東京都公園協会とNPO法人生態教育センターの関係者の皆様に感謝を申し上げます。多くの優しい方々に見守られ、1羽でも多くのひなが巣立つことを願っています。

 

外部リンク

葛西臨海公園・鳥類園ブログ「コアジサシの営巣状況と皆様にお願いです