澤本 将太
桜も散り、空を見上げればツバメが飛び、キビタキなど夏鳥や旅鳥のシギ・チドリ類の便りが聞こえ始めました。初夏の足音が近づいてきていて気候も穏やかになりアウトドアにも最適なシーズンになりました。ただ、今年の春は新型コロナウイルスの影響で思うように出かけることができないため、悶々とされている方も多いと思います。しかし、鳥見は野外で行うことが全てではありません。鳥の識別能力を磨くために図鑑や資料を読む、将来的に行きたい国内外の探鳥地を調べる・・・。こうした活動は室内でもできる鳥見の活動です。
今、首都圏など一部地域は不要不急の外出自粛が要請されています。しかし、買い物に加えて健康維持のための散歩やジョギングなどの運動は認められています。みなさんも、自身の居住地域には散歩道や運動などで利用する公園などがあると思います。地域によっては、池や田んぼ、干潟などの水辺があるという方もいるでしょう。すでに家の近くで自分のお気に入りの場所があるという方もいるかもしれません。
このコーナーでは、身近で見かける機会が多い種に焦点を当てて、似た種との識別点を整理して紹介します。
1日家に籠るのではなく近所の自然に触れて、近場に暮らす鳥たちを観察してみませんか?「似ている種類でも実は違った!」とか、「こんな色なんだ!」とか、「こんな行動するなんて!」というような発見が近所でも味わえるかもしれません。
画像① ダイサギとチュウサギ。嘴の長さ、顔に対する眼の大きさ、首の長さ、など違いがある。口角の位置も異なる(赤矢印)。
田んぼや川など水があるところで目につく’シラサギ’と呼ばれている白いサギの仲間。
ダイサギ、チュウサギ、コサギはシラサギのなかでも特に見かける機会が多い3種だ。彼らは色が同じだけれど、、よく見るとそれぞれ違う特徴がある。
見分けるポイント
大きさ
ダイサギ>チュウサギ>コサギ
ダイサギはコサギと比べるとはるかに大きい。
ダイサギとチュウサギは慣れないうちは難しいかもしれない。嘴の長さ、顔に対する眼のサイズ、首の長さなどで識別してみよう。また、遠距離ではわかりにくいが、チュウサギの口角は眼の下で終わるのに対してダイサギは眼より後方に伸びている点も識別ポイントのひとつだ。
見られる時期
チュウサギは夏鳥として4月頃に見られ始めて11月にはほとんどいなくなる、10月には渡りを控えて大きな群れが見られることも。
(ダイサギとコサギは周年見られる)
裸出部の色
嘴
ダイサギとチュウサギは繁殖期には黒くなり、非繁殖期は黄色。
コサギは1年を通して黒く、下嘴は肉色。
指の色
コサギは非繁殖期は黄色で繁殖期になるとピンクや橙色味を帯びる。ダイサギとチュウサギは周年黒い。
繁殖期の羽毛や色彩
サギ類は繁殖期になると、裸出部の色が変化したり、頭部や背に長い飾り羽をまとう。
その色彩や容姿は種類ごとに独特で、見ごたえがある。
ダイサギ→目先がコバルトブルー、虹彩がオレンジ色味を帯びる。背には長い飾り羽。
チュウサギ→虹彩が赤くなる。背だけでなく胸にも飾り羽。
コサギ→頭部から2本の飾り羽が伸びる。目先と指の色がピンク色。
生息環境
ダイサギとコサギは内陸だけでなく汽水・海水域でも普通だ。チュウサギは干潟にいるものの数はそれほど多くはなく、水田に多い。ダイサギは魚食性の傾向が強く、チュウサギよりも河川や河口で見られる機会は多い。
行動
ダイサギとチュウサギはゆっくりした動きで餌を狙うことが多い。一方、コサギは潮だまりや浅瀬などを機敏に走り回りながら魚を採食する光景がよく見られる。また、コサギは水中で脚を小刻みに震わせて、その振動に驚いて出てきた魚などを捕食する‘パドリング’と呼ばれる動作もよく行う。餌の取り方もじっくり観察してみよう。
画像② ダイサギ・チュウサギ・コサギ。体の大きさ、嘴の長さなどがそれぞれ異なる。ダイサギは最も大柄で嘴も長い。チュウサギは胸にも飾り羽が出ている。
画像③ ダイサギ。嘴が長い。繁殖期以外は嘴が黄色い。繁殖期になると、目先がコバルトブルーに変わり虹彩もオレンジ色になり、脛がピンク色。また、背には長い飾り羽が出る。
画像④ チュウサギ。繁殖期以外は嘴が黄色い。繁殖期になると虹彩が赤くなる。背だけでなく胸にも長い飾り羽が出るのはダイサギと異なる。
画像⑤コサギ。小型で指が黄色い点で上述の2種とは容易に区別できる。繁殖期以外も嘴は黒い。繁殖期は目先と指の色がピンクになる。頭部から2本、背には先端が上にカールした長い飾り羽が出る。
いかがでしたか。シラサギの特徴が少しでも伝われば幸いです。
白いサギ類は体格やその色彩から遠目からでも存在に気が付くことも多いですし、開けた水辺にいるので行動も観察しやすい鳥たちでもあります。みなさんも近所で見かけたら、ほんの少しでも立ち止まって、彼らを見てみませんか?
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