西村 眞一(善福寺公園探鳥会 担当)
当会の会報誌『ユリカモメ2022年8・9月号』に、「夏はアオバト@照ヶ崎」として神奈川県大磯町の照ヶ崎海岸の岩場のくぼみにある海水を飲むアオバトの記事が掲載されている。まさに「アオバトと言えば照ヶ崎」だが、実は関東地方にはあまり知られていないアオバトの名所がある。
その名所を私が初めて知ったのは、2014年8月の東京新聞に掲載の堀内洋助カメラマンの探鳥コーナー「アオバト(緑鳩) 鉱泉水を飲む鳩」に掲載された、群馬県上野村で撮影されたアオバトの写真だった。温泉水が岩にしみ出してくぼみに溜まり、その温泉水(鉱水)をアオバトが飲むことは、この記事を読むまで全く知らなかった。そこでいつかこの場所に行ってみたいと思っていた。
それが実現したのは、2019年8月だった。ただしこの場所は私有地で、一般者は立ち入ることができない。そのためにこの場所を発見した上野村の野栗沢温泉宿“すりばち荘”の当主が行っているアオバトツアーへの参加が必須だった。ツアーの当日は早朝から雨で、当主によれば「雨が降っているとアオバトは来ない」との事でツアーは中止となり、アオバトには結局会えずじまいとなった。またその1か月後には台風の被害で、アオバトの観察小屋への山道が崩れてしまい、アオバトツアーそのものが開催中止となってしまった。
2021年1月にNHKの自然番組『ダーウィンが来た!』で、この上野村のアオバトが放送された。そして2021年からアオバトガイドツアーが、すりばち荘に宿泊して小人数限定で完全予約の『アオバトの谷PROJECT』として再開された。
そこで2022年8月20日に、『アオバトの谷PROJECT』主催のアオバトツアーに参加してきた。前夜にすりばち荘に宿泊して、早朝5時に車ですりばち荘を出発し、途中から山道を20分ほど歩き、6時ごろにビニールハウスを改造した観察小屋に着いた。待つこと2時間余り、8時過ぎになるとやっとアオバトの「アオー、アオー」の声が、そこかしこから聞こえてきた。その内に周りの木々の枝にアオバトの姿が見えてきた。1羽が鉱水のたまり水場に降りると、次から次とアオバトが来て、鉱水を飲み始めた。その数50羽余り。中には少数だが、今年生まれの幼鳥もいた。
観察小屋前の鉱水溜まり
アオバトの群れ
左からアオバトの幼鳥、雄、雌
アオバトがこの鉱水を飲むのは、鉱水の中にあるナトリウムを補給するためと言われている。この観察小屋からアオバトまでの距離は約5mほどだった。周りは昼間でも暗く、デジタルカメラのISO感度を2000~3200で撮影した。私は1979年から本格的に野鳥撮影を始めたが、当時はISO64のリバーサルフィルムで撮影していたし、フィルムカメラ時代では高感度でもISO400だったので、まさに隔世の念だった。
10時30分頃まで観察し、また山道を歩き車ですりばり荘に戻ってきた。ガイドさんの話では、昨年今年と開催したアオバトツアーの中で、今日が一番アオバトの数が多かったとのことだった。
鉱水を飲むアオバト
鉱水溜まりに入って鉱水を飲むアオバト
飛び立つアオバト
日本野鳥の会東京
Wild Bird Society of Japan TOKYO
〒160-0022 東京都新宿区新宿5-18-16 新宿伊藤ビル3階
Tel: 03-5273-5141
電話受付時間:平日[月・水・金]の12時~16時30分のみ