葛西海浜公園 西なぎさコアジサシのその後

落合 はるな(葛西臨海公園探鳥会 担当)

先日ご紹介した、葛西海浜公園の西なぎさで営巣を始めたコアジサシの続報です。非常に残念ながら、6月10日には巣がすべて無くなってしまい、営巣は失敗という結果となってしまいました。お寄せいただいた情報と、コアジサシの保護を主導してくださっているNPO法人生態教育センターからの情報と、私が観察した結果を交えてご報告します。

 

前回の報告はこちら

 

報告後もコアジサシは順調に数を増やし、最大100巣ほどが確認されていましたが、多くが波打ち際に集まっていました。心配していた6月5日の大潮の日に、南向きの強風が重なったことで潮位が高くなりました。1日2回ある満潮に巣が潮を被ってしまい、多くの巣で親鳥が戻らず失敗してしまいました。

 

波打ち際の巣は潮位による影響は以前から心配されていました。波打ち際には砕けた貝殻が溜まっており、コアジサシが好むとされる白色の裸地の部分がありました。そこで保護区の設置直後に、関係者の皆様によって少し地盤の高い砂浜に白色の小石を撒かれており、そこにもコアジサシが順調に営巣を進めていました。ところが、そちらの巣もカラスやセグロカモメ、ウミネコが卵を食べる様子が確認されており、6日には全部で6~10巣と激減してしまいました。その後もカラスに襲われるなどして、10日には全ての巣が無くなってしまったとのことです。

 

もともとコアジサシは草の生えない「裸地」に卵を産む習性上、カラスなどの天敵に狙われやすく繁殖成功率が非常に低い鳥として知られています。それにしても、一晩でこれほどの数が激減してしまうものかと、自然の厳しさを改めて思い知りました。

 

保護区の様子。たくさんの方々が見守りに来ました。

渚橋から保護区を見下ろすハシボソガラス。

観察地点から最も近くで営巣していたコアジサシ。撮影したこの翌日に失敗が確認されました。孵化まであと4~6日でした。

孵化間近の巣がたくさんあったにもかかわらず、とても悲しい結果となってしまいました。これまで繁殖を成功させようと尽力してくださった、(公財)東京都公園協会とNPO法人生態教育センターの関係者の皆様に改めて感謝を申し上げます。

 

西なぎさは多くの方がレクリエーションで利用する公園のため、今年の保護区は撤去される可能性が高いですが、コアジサシが西なぎさを子育ての場所として選んでくれ、これまでで最大規模のコロニーをつくってくれたことは、保全上大切な知見となりました。東京湾を子育ての場所として頼り、遥か南から渡ってくるコアジサシのために、今後もできるだけの受け入れ態勢がとられることを願っています。また当会としてもできる限りの活動を続けていきたいと思います。

 

外部リンク

葛西臨海公園・鳥類園ブログ「西なぎさのコアジサシの営巣状況(6/7~10)