『90年前の小学校での愛鳥教育』

西村眞一(中西悟堂研究家／善福寺公園探鳥会担当)

　90年前の昭和9(1934)年7月17日に、中西悟堂は自宅(杉並区井荻3-41)から直線距離で約600mにある杉並区立桃井第四小学校(以下桃四小)で、午前11時より午後2時30分まで、職員児童を対象に、野鳥愛護の思想を普及するための講演を行った。これは小学校における最初の愛鳥教育と言えるものである。

杉並区立桃井第四小学校

　その後も中西悟堂は各団体や各学校で講演して、この7月だけでも計9か所に及んでいた。小学校で講演すると、児童たちが中西悟堂の自宅に押し掛けて、もっと鳥の話が聞きたいと言ってきた。

　この桃四小の卒業生にも、この愛鳥教育の遺伝子は受け継がれている。(公財)日本野鳥の会発行の『野鳥観察ハンディ図鑑　新・山野の鳥改訂版』や『野鳥観察ハンディ図鑑　新・水辺の鳥改訂版』の野鳥絵を描いている、野鳥図鑑画家の谷口高司氏がその一人である。

解説：安西英明　絵：谷口高司『野鳥観察ハンディ図鑑　新・山野の鳥改訂版』

(公財)日本野鳥の会発行(2013年5月1日)

解説：安西英明　絵：谷口高司『野鳥観察ハンディ図鑑　新・山野の鳥改訂版』

(公財)日本野鳥の会発行(2013年5月1日)

その他にも平成30(2018)年の夏休みの自由研究に、中西悟堂の事を書いた桃四小の6年生の児童もいた。杉並区が主催の毎年1月に行われる『善福寺川水鳥一斉調査』にも、桃四小の児童が保護者と一緒に参加して、解説員と共に善福寺公園内の水鳥を含めた野鳥の種類と個体数を数えている。今年も1月14日に開催された。