西村眞一(中西悟堂研究家/善福寺公園探鳥会担当)
昨年の12月20日~21日に、H旅行会社のバードウォッチングツアーで、秋田県大潟村に行ってきた。
羽田空港から大館能代空港までの飛行中に、窓から山形県と秋田県にまたがる雪に覆われた標高2236mの鳥海山が見えた。
「鳥」の名前の付く山が見えたので、今回のツアーの幸先が良いと感じた。
鳥海山 12月20日 山形県・秋田県
秋田県に入ると今度は、大潟村が見えた。大潟村はかつて琵琶湖に次ぐ広さのあった八郎潟を干拓して、新たに誕生した村である。
大潟村が誕生したのは、まだ干拓途中の昭和39(1964)年でした。
陸地に囲まれた水面は、“八郎潟残存湖”である。
八郎潟残存湖 12月20日 大潟村
今回のツアーの野鳥講師を務めるN氏から、以前に「大潟村にはハクガンが1000羽以上越冬している」と、聞かされていた。
本コラム『45年前の宮城県伊豆沼』で、ハクガンには会っているが数は一桁だった。
それが四桁ものハクガンが大潟村にはいるというので、やっと念願かなってツアーに参加した。
但し大潟村も広いのでどこにハクガンがいるかが問題だったが、今回のツアーには現地の野鳥情報に詳しいA氏が野鳥講師として参加して、ハクガンのいる場所を案内してくれた。
江戸時代にはハクガンが多数いると、まるで雪のようだと言われていた。
A氏の案内で、ハクガンがいる場所を訪ねた。
ハクガンが数百羽いたが、まるで白い線を引いているようだった。
ハクガン 12月20日 大潟村
ハクガンは白くて羽の先端が黒いので、飛ぶと白黒のコントラストがよくわかる。
但し幼鳥は灰褐色で羽の先端も、まっ黒ではない。
ハクガン 12月20日 大潟村
マガン、マガン第1回冬羽(左より1羽目と3羽目) 12月20日 大潟村
また大潟村では、ノスリをよく見かけた。
ノスリ 12月20日 大潟村
ガンやハクチョウは、八郎潟でも干拓されなかった水路をねぐらにしている。
その水路から日の出前後に、餌場に向けて飛び立つのである。
ハクガン 12月21日 大潟村
水路には、オオハクチョウ、コハクチョウ、そしてくちばしが黒い亜種アメリカコハクチョウがいた。
コハクチョウ(左) アメリカコハクチョウ(中) オオハクチョウ(右) 12月21日 大潟村
日の出時刻(6時58分)より20分も早く、ハクガンが飛び立った。
ハクガン 12月21日6時38分 大潟村
日の出時刻になったが山の上に雲があるので、太陽は顔を出さなかった。
夜明け 12月21日6時58分 大潟村
太陽は顔を出さなかったが、水面が赤くなった。
コハクチョウ 12月21日7時7分 大潟村
ハクガン以外のガンも、朝焼けの空に向けて飛び立った。
ガン 12月21日7時18分 大潟村
昭和48(1973)年に、大潟村でオオセッカの繁殖が確認されたことがきっかけで、昭和52(1977)年に、国が大潟村の一部を“大潟指定草原鳥獣保護区”に指定した。
国指定大潟草原鳥獣保護区と大潟草原野鳥観察舎 12月21日 大潟村
大潟村案内図 12月21日 大潟村
大潟村には冬季期間中(12月中旬~3月)は閉館している“大潟草原野鳥観察舎”がある。
大潟草原野鳥観察舎 12月21日 大潟村
この大潟草原野鳥観察舎周辺のヨシ原では、チュウヒが繁殖している。また越冬もしている。
ヨシ原 12月21日 大潟村
チュウヒ 12月21日 大潟村
大潟村から三種町へ向かった。
三種町の田んぼには、亜種ヒシクイがいた。
日本にいるヒシクイは主に2種類いて、亜種オオヒシクイと、亜種ヒシクイの2種類である。
亜種ヒシクイは亜種オオヒシクイに比べて小さいく、またくちばしと首が亜種オオヒシクイに比べて短い。
亜種ヒシクイ 12月21日 三種町
亜種ヒシクイ 12月21日 三種町
亜種オオヒシクイ 2024年12月6日 新潟県阿賀野市
三種町の田んぼでは、オオハクチョウ、コハクチョウ、の他に、黒いくちばしの基部に白いパッチがあるアメリカコハクチョウの幼鳥がいた。
オオハクチョウ、コハクチョウ、アメリカコハクチョウ
オオハクチョウ(左) コハクチョウ(中) アメリカコハクチョウ幼鳥(右)
三種町から男鹿半島の付け根にある船川港へ向かった。
この船川港には、コクガンが13羽いた。
この港でコクガンが13羽もいるのは初めてだと、野鳥講師のN氏が言っていた。
私が初めてコクガンを見たのは昭和54(1979)年の元旦で、今回は46年振りのコクガンとの再会となった。
元旦の宮城県東松島市の野蒜(のびる)海岸で、初日の出を見ていたら海岸にコクガンがいた。
この時が初めてのコクガンであった。
それから32年後の2011年3月11日に、東日本大震災が発生した。
野蒜海岸にも高さ10mを超す津波が押し寄せ、東松島市では1000人以上の人が亡くなった。
もし昭和54年の元旦にこのような大地震が起こり、津波が発生していたらと思うと、現在このように鳥を見ていられる幸せを感じてしまう。
コクガン 12月21日 男鹿市船川港
コクガン(左)、コクガン第1回冬羽(右3羽) 12月21日 男鹿市船川港
今回のツアーでは、2000羽余りのハクガンを見ることができた。
私が鳥を見始めた50年ほど前には、ハクガンは数年に1~2羽ぐらいしかいなかった。
このようにハクガンが増えたのは、“日本雁を保護する会”をはじめとする関係者のご尽力によるものと、感謝いたします。
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